生活必需品となったWi-Fi
今や私達の生活に欠かせないものとなったWiFi(無線LAN)。これは普段の生活のみならず、出張や旅行の出先においても無くてはならないものでしょう。「ホテルに到着して最初にやることはWiFiに繋ぐこと」という方も多いのではないでしょうか。
とは言え、未だに環境整備が不十分な宿泊施設を見かける機会も少なくないのが事実。どうも環境整備の重要性が分かっていない施設が多い気がします。これは私の実際の経験に基づく話ですが「そういう需要があるのは誰しもが知っているけど、単なる付加価値であってWiFiが無くてもホテル経営には別に影響ないでしょ」という考えをお持ちの経営者の方もお見かけします。これ、利用者からするとかなりのギャップがありますよね。
この記事では宿泊施設における無線LAN環境の整備の重要性を幾つかのデータに基づいて、私なりの考えを纏めてみます。
ビジネス客と観光客がホテル選びで重要視すること
まずはグローバル全体での「宿泊施設におけるWiFi」の需要を見てみましょう。宿泊施設のオンライン予約サービス大手のHotels.comによる2015年の調査によるとビジネス客の49%がWiFi環境を重要視しているとの調査結果がでています。観光客も25%が重要視しており、いずれのケースに置いてもWiFi環境が最も重視するポイントとして挙げられていることが分かります。
2015年と古めのデータではありますがWiFiのニーズが下がるということは想定しづらいので、むしろ今ではニーズが上がっていると考えるのが自然かと考えています。
訪日外国人が滞在中に困ったことに「WiFi」がランクイン
次に国内にスコープを狭めて見てみましょう。訪日外国人というのは日本の観光業にとって非常に重要なお客様であることは言わずもがなでしょう。下の図は2017年に観光庁が「訪日外国人が日本で困ったこと」を調査したものなのですが、無料公衆Wi-Fi環境が第2位にランクインしています。(「困ったことはなかった」を含めると第3位。)
テレワーク利用による需要拡大も想定される
また、テレワーク(リモートワーク)の拡大に伴い、宿泊施設におけるWiFi需要が今まで以上に高まることも想定されるでしょう。下図は総務省が平成29年に従業員300人以下の企業に対してテレワークの導入可能性を調査したものです。
宿泊施設におけるWiFi環境に求められていること
これまでの内容をまとめると、宿泊施設における公衆無線LAN環境に求められているポイントは以下の3点だと言えます。
- 無料であること
- 日本人・外国人を問わず利用できること
- ビジネスでも利用できること
言い方を変えると、上記のポイントを満たさない場合はWiFi導入済みの施設であっても顧客のニーズを満たせていない可能性があるということです。
私が宿泊施設のWiFiをチェックする際の観点をもう少し具体化してみました。 以下のケースに当てはまる施設は、個人的には利用したいとは思いません。(少なくとも二度目の利用は避ける。)
ケース1:利用可能ユーザが限定的
これは例えば「通信キャリアによる契約者向けWiFiサービスのみを提供している場合」です。その通信キャリアを利用しているお客様にとっては有用なサービスですが、異なる通信キャリアを契約していたり、外国人にとっては「使い物にならないWiFiサービス」と受け止められてしまう可能性があるわけです。
ケース2:一部のエリアでしかWiFiが利用できない
「フロントやロビー付近でしかWiFiが使えない」といったものがこれに該当します。WiFiのニーズをお客様の立場に立って考えてみると、以下の様な用途が容易に想像できるでしょう。
- SNSに写真をアップしたい。
- 仲間と話し合いながらネットで食事場所や観光スポットを調べたい。
- プライバシーが確保された場所で仕事をしたい。
そう、WiFiを使いたい場所は宿泊部屋ですよね。これは個人的な意見ですが、ロビーだけでしかWiFiを提供していないのは、もはや全く提供していないのとほぼ同じだと思っています。
ケース3:通信品質が悪い
「全館WiFi完備」「高速WiFi利用可」などを謳っているものの「電波が弱い」「帯域が細い」「電波が干渉している」等の理由でWiFiが途切れやすかったり、速度がやたら遅いものがこれに該当します。これを経験したことがある方は結構いらっしゃるのではないでしょうか。「WiFi完備」と謳っておきながら品質が悪いのでは、かえって評判を損ねるのではないかと思ってしまいます。
ケース4:セキュリティ対策が不十分
スマートフォンやパソコンでは様々な情報のやり取りを行う訳ですから、WiFi環境は安心・安全に使えるべきです。その為にも通信の暗号化やネットワークの管理・制御等の対策はきちんと行われているべきです。セキュリティ対策の不十分が原因で顧客の機密情報が漏洩するなどの事故が発生した場合、その顧客だけでなく、そうした脆弱な通信環境を提供している宿泊施設にも影響を与える可能性があります。「先日の情報漏洩の原因になったのって、あのホテルらしいよ」なんて言われているようなところに泊まりたくないですよね。
それにも関わらず、未だにWiFiに何の認証手続きも設けていない宿泊施設を見かけます。「お客様のパスワード入力の負担を減らすため」なんて言葉を耳にしたことがあるのですが、それって「家に他人が入りやすいように鍵をかけない」のと一緒だよなぁと私は思ってしまいます。。現代社会ではパスワードの入力なんて慣れっこですし、WiFiのパスワードはその特性上、必ずしも複雑である必要がないので少しでも対策を打っておいたほうが思わぬ過失を生じるリスクを減らせます。
資本力のあるホテルチェーンの施設はここ数年でだいぶ良くなってきた印象がありますが、旅館・民宿のようなところはまだまだこうした課題を抱えているところがどうしてもありますね。
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