世界一のユニコーン企業Bytedance
2018年にUberを抜き評価額ベースで世界最大のスタートアップ企業に成長したTikTok運営会社のBytedance(字節跳動)は2019年に入ってもソーシャルアプリ「多閃(Duoshan)」や「飛聊(Feiliao / flipchat)」など矢継ぎ早に新たなサービスを展開しています。つい先日にはSpotifyやAppleなどの強力な先行プレーヤーがひしめく音楽ストリーミングサービスへの参入もBloombergにより報じられました。同社はほかにもモバイルゲームやニュースアプリなど幅広い領域で事業展開や投資を行っています。
Bytedanceの新たな一手はスマートフォン開発?
そんな急成長中のBytedanceがついにハードウェア事業にも参入するようです。TechCrunchの以下の記事によると、Bytedanceがスマートフォンの開発を計画中であるとの報道をFinancial Timesが行ったとのこと。
狙いはプリインアプリによる「Bytedance経済圏」構築か
ソフトウェアの領域で戦ってきたプレーヤーがリスクの高いハードウェア領域に参入するのであれば、当然ながら何かしらの狙いがあります。まず容易に思いつくものとしては「Bytedance製アプリのプリインストール化」でしょう。
従来であればTikTokやToutiao(今日頭条)などのアプリの存在をあらかじめユーザに認知してもらい、Google PlayやApp Storeからダウンロードしてもらって初めてアプリを使ってもらえる状態になるわけですが、Bytedance製アプリがあらかじめインストールされた端末を販売することで、これらのステップをすっ飛ばして顧客にサービスの存在を知ってもらったり、優先的に使ってもらえることが可能になる訳です。また、各サービスの名前は知っていてもBytedanceの名前を知らない人はたくさんいるでしょうから、会社のブランド価値向上にもつながるかもしれません。
プリイン化はウザがられても経営的には重要な施策
プリインストールアプリと聞くと、「邪魔」「うざい」という印象をお持ちの方もいるかもしれません。私も携帯キャリアに勤めていたのでよく知っていますが、プリインストールアプリが多くの人にウザがられることは通信キャリアやメーカーも自覚しています。たとえ多くのユーザに煙たがられようと、ある一定数のユーザにリーチしてビジネスとしてプラスに働くのであれば経営判断としては正解とされているのです。アプリ提供会社との協業の際にもプリイン化が交渉材料になることは多く、それほど重要で効果のある取り組みなのです。(余談になりますが、過去に横行したオプションサービスの「ベタ付け」も似た側面があります。厳密には販売代理店を含めた事業モデル全体を説明すべきですが話が逸れるので割愛。)
中国4大テック企業「BATH」に続く独自OS登場の可能性は?
中国の3大インターネット企業「バイドゥ(百度 - Baidu)」「アリババ(阿里巴巴- Alibaba)」「テンセント(騰訊 - Tencent)」*1が過去に取り組んだ様に、Bytedanceが自社製OSの開発にまで踏み切ることも可能性の一つとして考えられます。最近ではアメリカによる禁輸措置に伴うGoogleとの関係悪化を受けてファーウェイ(華為技術)がHongMeng OS(鸿蒙OS)とも言われる独自OSへの転換に踏み切るのではとの報道もでていますね。
Bytedanceが単独でOS領域やアプリマーケットにまで参入することは個人的にはまだ懐疑的です。勝手な妄想ですが、米中関係の状況によっては中国の事実上の国策として中国企業連合が独自OSやマーケットの開発に踏み切る可能性はあると思います。(これまた余談ですが、日本のモバイル業界でも数年前にFirefox OSやTIZEN OSの話で一時期盛り上がりましたね。)
いろいろと話を広げてしまったので念の為・・・あくまで現時点ではFT誌が「Bytedanceがスマートフォンの開発を計画中かも」と報じたのみであり、プリイン化や独自OSの話は筆者の妄想なのでその点ご留意ください。
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