空からOSが降ってくるのが当たり前の時代
今やiPhoneやAndroidなどのスマートフォンのOSをモバイル回線経由で配布し、OSレベルで新たな機能を提供することは当たり前のことになりました。数ギガバイトもの容量のファイル(それもOS)をモバイル網を介して提供することはエポックメイキングなできごとであり、スマートフォンの普及期に携帯電話キャリアにいた私にとっても衝撃的だったことを覚えています。この移動体通信網を介してソフトウェアのアップデートを行うことをOTA(Over-The-Air)と呼びます。一昔前はファームウェア(Firmware)のFを頭に加えてFOTAと呼んでいましたが、配布するソフトウェアの範囲がファームウェアに限らなくなったこともあってか、今ではOTAと呼ぶのが一般的です。
OTAはCASE時代の自動車の必須要件
従来は工業製品の代表格だった自動車は、ソフトウェアと電動化により製造工程が大きく変わり、シェアリング・エコノミーという新たな潮流も相まって業界構造に変革が訪れ始めています。いわゆる「CASE」の時代を迎えているわけです。CASEとは独ダイムラーのディーター・ツェッチェCEOが2016年のパリ・モーターショーで発したキーワードで、Connectivity(接続性), Autonomous(自動運転), Shared(共有), Electric(電動化)の4つの言葉の頭文字から成り立つ造語です。
CAEで先行するテスラ
テスラ・モーターズは少なくともC, A, Eにおいて他社よりも先行しており、ソフトウェア・アップデートにより自動運転の性能を向上させるといったことを実現しています。「買った後も進化し続ける」という点はまるでスマートフォンのようです。
プラットフォーマーを狙う独ボッシュ
なお、こうしたコネクテッドカーのIoTプラットフォームを様々なプレーヤーと協業して構築しようとしているのがドイツのボッシュです。「コネクテッド」や「プラットフォーム」の指す範囲はとても広いので本記事では敢えて細かくは触れませんが、IT産業でGoogle, Amazon, Microsoftに覇権を握られたアメリカに自動車産業まで握られないように、インダストリー4.0などの文脈と共にプラットフォーマーとしての立ち位置を築こうとしています。
GM、OTA対応を急ぐ
今週月曜日にゼネラル・モーターズは同社の全世界の自動車を2023年までにOTAによるソフトウェア・アップデートに対応させる方針を明らかにしました。同社がDigital Vehicle Platform(デジタル・ビークル・プラットフォーム、以下DVP)と呼ぶシステムは2023年までにGMの全車種に導入されるとみられており、今年後半に発売が予定されている2020年型キャデラックCT5は、新しいOTA対応モジュールを搭載したGM初の車両になるとみられています。
GMのOTAとDVPが乗り心地まで向上させる
GMのデジタル車両プラットフォーム(DVP)は毎時4.5 TBのデータを処理できるようで、OTAによるソフトウェア・アップデートと当システムにより安全性だけでなく、エンジン性能、燃費、乗り心地、ステアリング、ナビゲーション等の性能向上が可能になるとのこと。
OTA対応を急ぐのはもちろんGMだけではなく他の自動車メーカーも同様です。ソフトウェアの重要性が高まる自動車産業、その業界構造の変化に注目です。