BIZ ACES | 携帯キャリアと外資系コンサル出身の地方移住者によるテック系雑記帳『ビズエーセス』

モバイル業界、宇宙ビジネス、自動運転などの最新動向。海外リソースを活用し、ニュースアプリでは手に入らない情報もお届けしています。

BIZ ACES - 携帯キャリアと外資系コンサル出身の地方移住者による雑記帳

無人の自動車が運転手を出迎えに来るTeslaのEnhanced Summonはただの便利機能ではない。2020年の無人タクシーに向けた一歩である。

テスラの遠隔操作機能がさらに進化

ソフトウェア・アップデートにより自動車の機能・性能を向上させるイーロン・マスク氏のテスラ・モーターズですが、4月頃からアメリカ国内で提供開始されている機能に「Enhanced Summon」というものがあります。

 

これは既存の自動車庫入れ機能「Summon」を文字通り拡張したもので、スマホアプリから自動車に命令を送ることで自動車自身が空きスペースを探して無人で駐車したり、離れた場所にいる運転手のところまで無人で出迎えに来てくれるというもの。

これにより以下のようなことができる様になるわけです。

  • アウトレットで大量に買い物をしたあとに車がお店の入り口までお出迎え。その場で荷物を積み入れて車に乗り込む。つまり、駐車場所からお店までカゴや台車を返却するムダな行程を無くせる
  • 雨の日にレストランの入口で降りて駐車は車に任せる。帰るときも車に出迎えてもらい、濡れること無く車に乗り込む

ちょっとした事の様にも思えますが、実際に使うシーンのことを想定するとかなり便利です。自動車というと「速度・加速・曲がりやすさ・燃費・乗り心地などをどう設計するか」がメーカーが注力する点ですが、それに加えて自動車の利用シーン全体をデザインするというところまで踏み込んで実行・実現できているのはテスラならではと言えるでしょう。

まだまだ改善の余地あり 

ただし動画を見る限りでは、安全性のためか速度が遅かったり不必要なステアリング操作があったり停車位置が不自然だったりと、まだまだ改善の余地があります。また、現状はドライバー(アプリの操作者)は自動車から約50m以内にいる必要があり広大な駐車場では利用シーンが限られそうです。GPSの特性から立体駐車場のような高さ方向の移動を求められるシーンも少なくとも現状は厳しいでしょう。

 

でも、それがテスラ流。ある程度の物ができたらベータ版としてリリースする。新しいもの好きで従順なテスラオーナーはそれを使う。そしてデータやフィードバックを喜んでテスラに提供する。テスラは膨大な商用データを用いてさらに改善していく。自動車を制御しているのはソフトウェアなのだから、自動車だってBizDevOpsしていけばいい。このマインドセットに追従できていないのが、既存の自動車メーカーでしょう。

Enhanced Summonは無人タクシーに向けた一歩だ

さて、大事なのはEnhanced Summonはただの便利機能ではないということ。既に報じられているように、イーロン・マスク氏は2020年100万台のテスラ車を利用して完全自動運転のロボタクシー事業を開始すると発表しています。オーナーが自動車を使っていないときに、車が自らタクシーとなってお金を稼いでくれるようになる訳です。

 

これはなにも夜寝ている間だけの話ではありません。オフィスに居る間の8時間、映画を見ている間の2時間、買い物や食事をしている間の1時間でさえもタクシーとして稼働できるわけです。こうした世界を実現するために必要なものの一つが「車自らが駐車スペースを探したり、定められた場所に移動する機能」であり、これがイーロン・マスク氏やテスラがEnhanced Summonに込めた真の狙いだと私は思っています。 

イーロン・マスク 未来を創る男

イーロン・マスク 未来を創る男

 
INSANE MODE インセイン・モード イーロン・マスクが起こした100年に一度のゲームチェンジ (ハーパーコリンズ・ノンフィクション)

INSANE MODE インセイン・モード イーロン・マスクが起こした100年に一度のゲームチェンジ (ハーパーコリンズ・ノンフィクション)

 
イーロン・マスク 世界をつくり変える男

イーロン・マスク 世界をつくり変える男