アルテミス計画
アメリカ航空宇宙局(NASA)は先日、アルテミス計画と称した「2024年までに月面に男女2名を送る」プロジェクトを発表しました。アポロ11号が1969年に人類史上初めて月に着陸してから50年、新たな宇宙開発競争の本格到来を感じさせる発表でした。
冷戦時代のロケット開発競争
50年前の世界は冷戦の最中であり、ロシアの後塵を拝していたアメリカは科学技術の発展と国としての威信を取り戻す為に史上初の有人月面着陸を目指しました。両国が莫大な費用をかけて宇宙開発競争でしのぎを削ったのは言うまでもなく、ロケットの打ち上げ技術のICBM(大陸弾道間ミサイル)への転用など核戦略を視野に入れてのことです。
米露の次を狙う中国・イスラエル
さて、ニール・アームストロング船長が月に降り立って約50年、再び人類は月を目指すことになります。今回発表されたアルテミス計画の他にも、無人のものや月周回などを含めると月に関する宇宙開発計画は世界各国で進められています。
最近ですと2019年1月に中国の無人探査機「嫦娥4号」が月の裏側に着陸したことは記憶に新しいです。また4月にはイスラエルの民間団体SpaceILが民間初の月面着陸を試みたものの残念ながら着陸に失敗しました。
月軌道ゲートウェイ
また国際宇宙ステーション(ISS)に関わる日本を含めた各国は、将来の月面探査および深宇宙探査に向けた有人拠点として「月軌道ゲートウェイ(Lunar Orbital Platform-Gateway:通称 Gateway または LOP-G)」の構築を目指しています。
なお、月軌道ゲートウェイの検討状況についてはJAXAの宇宙科学技術適合講演会のこの資料が分かりやすいです。ゲートウェイの運用開始後に関して書くと、NASAは月から火星を目指すMoon to Mars計画を既に掲げています。
こうした宇宙開発競争の再燃の裏には資源開発や新たな科学研究の発展といった側面もありますが、経済発展とともに宇宙開発を急速に進める中国に対する抑止力を強めるといった側面もあるでしょう。
2018年に中国は地球周回軌道に35基のロケットを到達させ、世界で最も多くのロケットを地球周回軌道に到達させた国になりました。人類にとって中国の目覚ましい科学技術の発展は喜ばしいものですが、残念ながら科学技術の発展というのはどの国であっても手放しで喜ばれることはなく、常に国家安全保障(National Security)と隣り合わせです。
いまから5年後10年後の宇宙開発情勢はどうなっているのか、そこに向けて世の中がどの様に変化していくのか、注目していきたいです。