Fly Me to the Blue Moon
Amazon CEOのジェフ・ベゾス氏はロケット開発・打ち上げ事業を行うBlue Originや、衛星コンステレーション計画を目論むKuiper Systems LLCなど宇宙関連事業に積極的に投資している事で知られていますが、5月9日(現地時間)にBlue Originから月面着陸機「Blue Moon」の発表がなされました。
人類はスペースコロニー "O'Neill Worlds" の構築へ
この発表イベントはジェフ・ベゾス氏が地球のエネルギー問題や人口問題などを取り上げながら人類が宇宙に向かう重要性を説きながら話が進められます。
人類が宇宙で社会活動を行う場所に関してベゾス氏は(地球に環境が似ているとされている)火星は「地球からの移動時間」「ロケットの打ち上げ機会の少なさ」などの輸送観点や、「地球とのリアルタイムでのコミュニケーションの難しさ」という通信観点、そして重力の違いなど様々な課題がある旨を言及。この点、火星を目指しているイーロン・マスク氏との考え方の違いが見受けられます。
ベゾス氏はプリンストン大学の物理学者であり宇宙開発のアクティビストであったジェラルド・オニール氏によって1969年に提唱されたスペースコロニー構想の実現(ベゾス氏は "O'Neill colony" と発言)を目指すべきという考えを示しました。
スペースコロニーは地球の代替となるようなものですから、国際宇宙ステーション(ISS)と文字通り比較にならないほどの超巨大なものです。当然、数十年でできるような代物ではありません。ベゾス氏がイベントの最前列に座っていた子供を見ながら「このコロニーを創るのは私じゃない。キミやキミの子供が創っていくのだよ。」と、人類が何世代もかけて取り組んでいくべき事であると説明していたことが印象的です。
壮大な構想の実現に向けた第一歩、月面基地の開発へ
こうした宇宙開発の促進のためには、ロケットの打ち上げコストの削減が必要で、ロケットの再利用に向けた開発に取り組んでいることも改めて説明。「ロケットを使い捨てするのは、車で旅行に行った先で毎回車を捨てるようなものだ」という、もはや聞き慣れたセンテンスもありました。
そして人類の宇宙開発の足掛かりとなる月面基地(月の植民地化とでも言うべきでしょうか)の開発に向け、月面着陸機「Blue Moon」が発表。これはアメリカのペンス副大統領が提唱する「2024年までに月での有人探査を実施する」という方針に従ってNASAとの共同開発が進められてきたものです。
Today, our founder shared our vision to go to space to benefit Earth. We must return to the Moon—this time to stay. We’re ready to support @NASA in getting there by 2024 with #bluemoon. pic.twitter.com/UqQyMa9Zcn
— Blue Origin (@blueorigin) May 9, 2019
月面に物資を輸送するだけでなく、月面に向かう途中で小型の衛星をデプロイする事も可能です。 Blue Moonには3年かけて開発されたBE-7エンジンが搭載されます。BE-7エンジンの燃焼試験は2019年夏に開始されるとのことです。
Blue Originは2019年後半にも同社のロケットNew Shepardによる有人宇宙旅行を実施予定です。いよいよ商用フェーズが見えてきたBlue Originの今後の動向からますます目が離せません。Fly me to the Moon.
なお、Blue Originの発表イベントはこちらから観られます。